
聞きなれない言葉だけど、高次脳機能障害ってなに?
現役の言語聴覚士が簡単に解説します。
高次脳機能障害とは身体的な障害ではなく脳機能の障害で、見た目ではわからない為、理解されにくいことが多い障害です。人知れず苦しんでいる人も多くいます。
本記事では下記の内容を解説します。
1 高次脳機能障害とは

生まれつき脳機能に発達の障害があったり、脳血管疾患、脳外傷、脳炎などにより、言語障害、記憶障害、注意障害などをきたすことを高次脳機能障害といいます。
脳に障害を受けるといっても、脳全体が障害を受けるわけではありません。脳の一部あるいは少し広い領域に障害を受けることで、それまで保たれていた健康な機能が正常に機能しない状態となります。また、脳の損傷部位やどの程度損傷したかによって、現れる症状もことなります。損傷された領域によっては一つだけの症状ではなく、複数の症状が現れ混乱してしまいます。そのため、ご家族やまわりの方々の理解が大切になってきます。
2 高次脳機能障害の症状

2-1 注意障害
脳に損傷を受けた後は、ぼんやりしたり、表情の動きが乏しくなったり、全体に反応が遅くなることがあります。これらは全般性の注意障害といわれる症状です。
注意障害は、以下の4つの機能がうまくいかないために起こります。
- 一つのことが続けられない(注意の持続低下)
- 見つけたいものに気がつかない(選択性注意の低下)
- まわりの声や音にすぐ注意がいってしまい落ち着かない(同時処理の低下)
- 状況に応じて注意を転換できず、同じことを何度も言ったり、同じ行動を繰り返したりする(注意の転換の低下)
2-2 記憶障害
記憶には、今、見たり聞いたりしたことを覚える力の記銘力と思い出す力の想起力があります。脳の損傷を受けた場合、昔のことを思いだす力の想起力は比較的保たれていることが多いですが、新しいことを覚える力の記銘力が低下してしまう人が多いです。認知症の初期症状も記銘力の低下が多いです。見たことや聞いたことを数分から数時間後には忘れてしまう人もいます。
2-3 失語症
「話す」「聞く」「読む」「書く」の言葉によるコミュニケーション全般に関わる障害です。話そうとするが言葉が出てこない。相手の言っている言葉の意味が分からない。文章を読むことができない。文字を書くことができない。などの症状がでます。
コミュニケーションを取ることが難しくなるため、一人で悩み、気持ちが落ち込み、孤独感が強くなることが多いです。
2-4 失認症
見ること、聞くこと、触ることの機能自体には問題ないのですが、それが何であるかわからなくなる症状です。ものは見えているに、見たいものを1つのまとまった形として捉えられなかったり、1つの形として捉えられるが、意味と結びつかなかったりします。その為、触ったり、聞いたりするとわかりますが、見ただけでは何かわからなくなります。
2-5 失行症
麻痺などはないにも関わらず、日常生活で行っている一連の動作(歯を磨く動作、髪をとく動作、服を脱いだり着たりする)がうまくできなくなります。
動作自体は理解できているけれど、実際にやってみるとうまくできません。
3 高次脳機能障害に対するリハビリテーション

まずは原因となった病気に対して治療が行われます。その後、障害の程度や時期に応じて以下のリハビリが行われます。
- 損傷された機能の向上を目指す練習
- 保たれている機能を活用して代償する練習
- 電子機器(スマホなど)を使用して環境調整を行い活用する練習
- 日常生活の向上を目指す練習
4 支援方法

日常生活や社会生活を送る上で困難を生じやすい一方で、外見からは障害が分かりにくく、本人でも障害に気づきにくいことも多いため、「見えない障害」ともいわれます。
そのため、家族・本人ともに混乱して戸惑うことがあります。高次脳機能障害では、どこまでが元来の性格や能力で、どこからが障害なのかを厳密に区別することが難しいので、できること、できないことを評価して、今までの生活や人生観を尊重して、なるべく主体的に行動でき、日常生活を少しでも円滑に送れるように周囲の理解を受けながら、環境を整えていくとこが大切です。
5 まとめ
障害は残ったけど、周りの理解を受けながら、長所を活かして自分らしい生活を送ることが大切です。